思い出の中のあの歌この曲

メロディーとともによみがえるあの頃の・・・

♪ 滝廉太郎「花」

組歌《四季》より 花 - YouTube

組歌《四季》より 花 · 藤原伊央里・紀野洋孝

組曲」ではなく、「組歌」というのを初めて知りました。

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現在の墨田河畔

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「写真の中の明治・大正」より「墨堤花見之図」!?

服装から時代を判別する知識はありませんが、4月上旬(?)にしては厚手の着物の人が多いように思います。3月末に満開で、昼間は20度を上回る、温暖化の現在よりもやはり気温は低かったのでしょうか。

 

作詞:武島羽衣 作曲:瀧廉太郎

春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
櫂(かい)のしずくも 花と散る
ながめを何に たとうべき


見ずやあけぼの 露あびて
われにもの言う 桜木を
見ずや夕ぐれ 手をのべて
われさしまねく青柳を


錦おりなす 長堤に
暮るればのぼる おぼろ月
げに一刻も 千金の
ながめを何に たとうべき
※1900年(明治33年)同年11月1日歌曲集(組歌)『四季』の第1曲

 

 

 先日購入した半藤一利『歴史探偵 忘れ残りの記』(文春新書)を読んでいたら、「春はうららかにあらず」という項があり、その中に「昔、田辺聖子さんから『花』の歌詞のもとが『源氏物語』胡蝶の巻にあると聞いて、それが『六条院の宴』にあるのを見つけた」という下りがありました。

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 この件に関する分かりやすいコラムを、同志社女子大学のホームページで見つけました。

「花」と『源氏物語
吉海 直人(日本語日本文学科 教授)

 

 滝廉太郎作曲の「花」ができたのは明治33年のことでした。作詞は、日本女子大学教授で歌人武島羽衣(はごろも)が担当しています。その一番の歌詞は、

    春のうららの隅田川 のぼりくだりの舟人が
    櫂のしづくも花と散る ながめを何にたとふべき

となっています。のどかな隅田川の春の光景が、七五調で見事に描写されていますね。「うらら」は「うららか」でしょう。(中略)

 それだけではありません。実はこの歌詞には、どうやら『源氏物語』胡蝶巻が踏まえられているようなのです。胡蝶巻というのは、光源氏が築いた六条院の春の御殿が舞台となっています。その女主人である紫の上が龍頭鷁首(げきしゅ)の船を池に浮かべて船楽を催し、そこに秋好中宮付きの女房を招待し、春のすばらしさをこれでもかと見せつける趣向になっています。見物にやってきた女房達はただもううっとりとして、本来はライバルであるはずの春の御殿を讃える和歌を詠じてしまいます(春秋優劣論としては秋の敗北を意味します)。その最後の歌こそが、

    春の日のうららにさしていく船は棹の   しづくも花ぞ散りける

でした。いかがですか。一見しただけで、「花」の一番の歌詞と類似していることがわかりますね。
(中略)
 ただし「棹のしづく」が「櫂のしづく」に変っています。もちろん「棹」より「櫂」の方が、「花のように散るしずく」がたくさん散るはずです。というより『源氏物語』では、「さす」に「日射す」と「棹指す」が掛けられているので、どうしても技法的に「棹」でなければならないのです。
 あるいは「のぼりくだりの舟」そのものが、「櫂」を用いる西洋的なボートをイメージしているのかもしれません。もしこれがボートレース(早慶レガッタ)の光景だとすると、従来想像されていた古風なイメージは、それこそ幻想だったことになります。さて、いかがでしょうか。

https://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/2015-03-13-09-00

 

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 引用したコラムにもありますが、これまでは、いくつかの参考文献やネット上の記事から、作詞の武島羽衣氏が隅田川で繰り広げられるボートレースを観て書いたものかなと思い込んでいましたが、必ずしもそうではないようですね。
 下のように宮内省御歌所寄人も務めた」著名な歌人だったのですから、「源氏」のこの場面もよくご存知だったことでしょう❗️

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武島 羽衣(たけしま はごろも、明治5年11月2日[1][2][註 1](1872年12月2日) - 昭和42年(1967年)2月3日)は、日本の国文学者、歌人、作詞家、日本女子大学名誉教授。宮内省御歌所寄人も務めた。本名は武島 又次郎。瀧廉太郎の歌曲「花」の作詞者として知られる。(Wikipedia

 

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 墨田河畔には遠く及びませんが、昨日近くにある千鳥川桜堤公園に初めて行ってきました。山の桜もいいでしょうが、清流に沿って咲いている桜は格別ですね。遠くに源平古戦場の三草山も見えていました。