思い出の中のあの歌この曲

メロディーとともによみがえるあの頃の・・・

♪ 『運命』(ベートーヴェン)―芸術鑑賞会で聴いたN響―

【N響】ベートーヴェン交響曲第5番 運命 Beethoven Symphony No 5 - YouTube

 

 先日、ツイッター(今はXとか言うらしい)で偶々東京混声合唱の投稿を見ることがありました。地方の小学校でのいわゆる芸術鑑賞会でした。本邦最高峰の合唱団の演奏を小学生が聴いているということに驚くと同時に、50年あまり前の高校時代(たぶん2年生の秋)にNHK交響楽団(といっても小編成で20数人だったでしょうか)の演奏で「運命」を聴いたことが思い出されました。

 在学していた高校ではなく、近くの中学校の行事でしたが、吹奏楽部顧問のN先生の配慮だったのか、部員の1・2年生20名ほどが、秋の日の午後5・6時限を公欠扱いでその芸術鑑賞会に参加することができました。

 団体で正門を出て行くときに、校舎の二階からうらやましそうに眺めていた同級生の姿を覚えています。

 

 田舎の高校生でしたが、N響がわが国で最高のオーケストラであることは知っていました。生のオーケストラは中学3年のときに、地元の小学校にやってきた朝比奈隆率いる大阪フィルで「新世界」を聴いたことがありましたので、2回目の生オケということになります。(朝比奈さんは、冷房のない小学校の体育館で、演奏中にあまりの暑さに、右手のハンカチで汗を拭き、左手のタクトで指揮していたのが忘れられません)
 小編成(下の写真よりは多くて20数名だったでしょうか)ですから、指揮者はいなくて、バイオリンのトップの年配の奏者が合図して「運命」などを演奏されていました。
 いかんせん、迫力には欠けるものの、普段聴くことのない生の弦の音は新鮮に響きました。

今も芸術鑑賞会に出向かれているようです(NHKプロモーションのホームページより)

 現職の頃は、毎年秋に芸術鑑賞会があり、50代の頃は数年間にわたりその担当をしていました。音楽・古典芸能・演劇というサイクルでやっていましたが、音楽の年にクラシックをやることは年々少なくなり、クラシックの年でも予算的に呼べるのは、そういう鑑賞会を主な仕事にしているような、あまり知名度の高くない(?)小編成のオケがほとんどで、文化庁あたりの補助事業でもない限り、予算の面で一流のオケや合唱団を呼ぶことは不可能なのが現実です。
 そういう意味で、半世紀も前に貴重な機会を提供して下さった当時の顧問の先生には感謝しています。

 

 これは余談ですが、そのN先生(英語科の先生で50代後半だったでしょうか)に生徒指揮をしていた私が職員室で「ティンパニを買ってほしい」と直訴(笑)したときに、「藤原君、そのティンパニっていうのは何や?」と言われたのには参りました。

 

 10数年前のことでしたが、この芸術鑑賞会への県の補助が削減されるということがありました。その時はPTAからの補助でなんとか凌いだと思いますが、おそらく今もなかなか予算的には厳しいのではないでしょうか。

 色々と苦心してそれなりの演者を招いても、価値観の多様化、また子ども達を取り巻くメディア環境の変化などもあってか、それほどの興味関心を呼び起こせないというのが、残念ながら現状のようです。

 ちょっと見たいな、聴きたいなと思ったら、YouTubeなどで家庭でも簡単に色んなジャンルの音楽が視聴できるというような時代になり、私のような高齢者もその恩恵に預かるような時代が来るなどと、昭和の時代に誰が想像したでしょうか。