思い出の中のあの歌この曲

メロディーとともによみがえるあの頃の・・・

♪ 「浜千鳥」

浜千鳥 (歌詞つき) 鮫島有美子 - YouTube

 

歌唱:鮫島有美子

 

 前回の投稿から3ヶ月余り、ネタ切れもありますが、何かと野暮用などもあって、ずいぶんと間が空いてしまいました。
 プロ野球ー今年はオリックスファンとしてはハラハラしながらも最高の一年でしたーが終わると、秋の夜長はYouTubeか繁昌亭(上方落語の定席)見放題で過ごすことが多いです。
 YouTubeでは、「あなたへのオススメ」という動画紹介がありまして、そんな中で目にとまったのが、この「浜千鳥」という歌でした。
 YouTubeには、いろんな歌い手の歌唱がUPされていますが、男声では五十嵐喜芳さん、志摩大喜さん、女声ではなんと言っても鮫島有美子さんの歌唱が気に入って、繰り返し聴いてきました。(昭和の頃には一時、ファンクラブに入っていました)
 「思い出の中の」というタイトルではありますが、これという思い出があるというよりも、折に触れて繰り返し聴き、また口ずさんできたというぐらいのことですが・・・。

『少女小曲集 濱千鳥』
大正十年十一月二十五日発行、著作者・弘田龍太郎、清水桂、発行者・鹿島佐太郎、発行所・小学新報社、本田庄太郎 畫
「池田小百合 なっとく童謡・唱歌」より https://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/doyobook/doyo00hirota2.htm

「浜千鳥」
作詞:鹿島 鳴秋明治24年~昭和29年・1891-1954)
作曲:弘田 龍太郎(明治25~昭和27年・1892-1952)
雑誌『少女号』1920年大正9年)1月号

弘田龍太郎(安芸市観光協会ホームページより)


青い月夜の浜辺には
親を探して鳴く鳥が
波の国から生まれ出る
濡れた翼の銀の色


夜鳴く鳥の悲しさは
親をたずねて海こえて
月夜の国へ消えてゆく
銀のつばさの浜千鳥

 短調の流麗なメロディーに乗せて、「親を探して・たずねて」と繰り返し、「波の国から生まれ出る」に対比された「月夜の国へ消えてゆく」という悲しくも不思議な歌詞が、今思うと子ども心にも気にはなっていたのでしょう。

 何か疑問があるとすぐにネットでググるというようなことが出来ない昔のこと、詩作の背景を調べることもなく、何十年もの月日が経過していました。

 このたび、この歌を取り上げるにあたって調べてみると、やはり作詞の鹿島 鳴秋(かしま めいしゅう)氏の生い立ちが詩の文句に重ねられているようです。

 

 もの悲しい詩の生まれた背景には二つの説があるということです。
詩人が早くに生き別れた(6歳の時に父が家出をし、母は再婚して他家に嫁いだ)両親を偲んで書いたという説と、亡くなったひとり娘のことを思って書いたという説です。
 後者は、作品の書かれた時期(大正8年・1919年)と娘さんが亡くなった年(昭和6年・1931年)に大きな開きがあり、ここでは前者を取りたいと思います。

「浜千鳥歌碑」(千葉県南房総市和田町

『青い月夜の浜辺には…』で始まる童謡「浜千鳥」の歌は、1919年に鹿島鳴秋によって作られ、今も日本の抒情歌の名曲として歌い継がれています。
この詞は、鳴秋が柏崎に住む旧友を訪ねた折、裏浜から番神の海岸を散歩しながら、初夏の海の印象を歌にしたものと云われています。
1920年、弘田竜太郎によって作曲され、全国的に愛唱されるようになりました。
浜千鳥の碑は、1961年に海岸公園(現アクアパーク駐車場)に建碑されましたが、現在は「みなとまち海浜公園」内に移設されています。

新潟県柏崎市のホームページより ※太字、下線は筆者
https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/kanko_bunka_sports/kanko/shiru/kashiwazakinobunka_rekishi/9905.html

 

 さて、この歌の歌碑は全国に6カ所もあるということです。( 「歌碑を訪ねて西東」http://monument.sakura.ne.jp/index.html

 もちろん、もっと多い歌碑(例えば「琵琶湖周航の歌」12 「故郷(ふるさと)」14
)もありますが、「6カ所」というのは、この歌が長く、そして広く親しまれてきた一つの証左と言えるかも知れません。

 作詞の鹿島鳴秋にちなむ歌碑だけでなく、作曲者・弘田龍太郎の出生地である高知県安芸市(下の写真)や中学校(旧制)に通った三重県津市にも歌碑があります。

 名前は昔から知っていましたが、改めて弘田龍太郎の代表的な童謡や歌曲を調べてみると、今に歌い継がれる名曲の多いことに感心させられます。私達のような前期高齢者には、懐かしくなじみのある歌ばかりです。

「雀の学校」
チイチイパッパ チイパッパ♪
「春よこい」
春よ来い 早く来い あるきはじめた みいちゃんが
「鯉のぼり」
甍(いらか)の波と 雲の波 重なる波の 中空(なかぞら)を
「靴が鳴る」
おててつないで野道を行けば 晴れたみ空に 靴が鳴る
「金魚の昼寝」
赤いべべ着た かわいい金魚 おめめをさませば ごちそうするぞ
「雨」(雨がふります 雨がふる)
雨がふります 雨がふる 遊びにゆきたし 傘はなし
「叱られて」
あの子は町まで お使いに この子は坊やを ねんねしな
「浜千鳥」
青い月夜の浜辺には 親を探して鳴く鳥が 銀のつばさの浜千鳥
「小諸なる古城のほとり」
島崎藤村が長野県小諸の懐古園で詠んだ旅愁の詩

 

 という訳で、秋の夜長にはふさわしい童謡の名曲を取り上げてみました。

ここまで書いて思い出したのは、「バタヤン」の愛称で一世を風靡した、あの田端義夫さんの歌う「浜千鳥」です。

 あの方の哀愁を帯びた歌い方にも捨てがたいものがありますね。

浜千鳥 - YouTube